レコーディングテストの結果が思わしくなかった。
 海羽が作ってきた曲は、数曲あって。その中から、一番自分が歌いやすいと感じたものを選んだ。
 自分の歌の、何がいけなかったのか。
 まさか、不合格だなんて。
 再テストがあると、教師たちは言っていた。
 張り出された結果表の前。愕然とそれを見上げていたトキヤの傍に、誰かが立った。
 …海羽だった。
「ごめん。ボクの曲が、キミをひき出しきれなかった」
 海羽に深々と頭を下げられて、気が動転した。
 けれど、海羽もまた、不合格なのだ。
 これは、彼女を“コネ入学”と陰で言っている者らにも衝撃だった。
 身内なのにどうして…そう囁きあっていたところへ、海羽自身が言い放った。
「身内だから、でしょ。その分、点が辛くなる。ボクと組むと、デビューが遠くなるよ」
 それは、普段の彼女からは想像しがたいほど、ひどく冷たい眼差しだった。七光りでやっていけるほど甘い世界じゃない…そう、潜ませて。
 このコンビは、初めからひどい陰口を叩かれていた。
 片や、現役アイドルの双子の弟。
 片や、学園長の縁続き。
 本人たちの実力が、それらを押さえつけて余るほどだったから、事なきを得ていた。
 また、それぞれに、そんな中傷には耳も貸さなかった。
 ……と。少なくとも、トキヤは耳を貸すなどありえないと思っていた。
 けれど。
 こそこそ言っている連中にぴしゃりと言った後、海羽は。踵を返し、足早にどこかへ行ってしまった。
 その後の授業も、エスケープして。




   Episode.03 『あなたへと吹く風』




 放課後になっても海羽は教室に戻らなかった。
 もしかしたら、寮に帰ってしまったのかもしれないし。
 後日改めて、話をするでもいいか…と。
 そう流してしまうつもりで、トキヤはいたのだが。
「え、…戻ってないの?」
 携帯電話で誰かと話していた音也が、そんなセリフを言って。部屋の時計を見やった。
 声音が、深刻そうだったから。トキヤも、読んでいた本から目を離して音也を見る。
「…そう。ううん、こっちには来てないし、トキヤも今部屋にいる。うん。…心配だね…」
 私? と。トキヤは怪訝そうな顔をして。
 音也は、あと二言三言相手と会話をすると、携帯電話を切った。
「…私が、どうかしましたか?」
「んー、いや、トキヤじゃなくってさ。海羽さんがさ、まだ部屋に戻ってないんだって」
 通話の相手が春歌だったこと、どうも海羽は一度も部屋に戻ってきていないこと。夕食にももちろん顔を出していない…と。
 音也の話を聞き、トキヤは無意識に本を閉じた。
「なんか、今日は一緒にテレビ見るって約束してたんだって。でも、時間になっても来ないし、ケイタイ鳴らしてもつながらないって」
 レコーディングテスト不合格の件は、音也も春歌たちも知っている。あの、結果発表の後から、たぶん誰も海羽の姿を見ていないのだ。
「あの海羽さんが、女の子の…それも七海との約束をすっぽかすとか、ちょっと考えられないんだよね」
 それは確かにその通りだ。海羽お気に入りの女の子の中でも七海春歌は別格らしいと、トキヤも知っている。
「なんかあったんじゃないといいけど、ってそう言うハナシ」
 春歌は、もしもトキヤもいないなら、二人で練習をしているのかもと言っていた。けれど、トキヤは今ここにいて、やはり海羽の所在は知らない。
 しばし、逡巡の間があいて。
 トキヤは閉じた本を机の上に置くと、上着を手に取った。
「…ちょっと出てきます」
「探すの? 手伝おうか」
「…結構です。君は自分の課題を片付けてしまいなさい」
 これは我々二人の問題です、と。小声で付け足されたそれに、音也は「かもね」と納得を示した。
「あー、じゃあさ。見つかったかそうでないかだけは連絡くれよ。七海たちのとこに伝えてやりたいからさ。海羽さんは大人だから、そんなに心配しなくてもとは言ってるけど、ね」
「…………そうですか」
 わかりました、と言って。
 トキヤは、部屋から出た。



 心当たりなどなかった。
 この時間、主に学園内で。
 外から校舎を見ても、明かりがついている部屋はない。
 今日は、誰も残っていないのだろうか。
 けれど、彼女がいそうな場所なんて。
「屋上、ぐらいか」
 二人で話をしたことがある場所は、教室と屋上ぐらいだ。それも、何回も話したわけじゃない。
 同じクラスなのに、二人は擦れ違いが多かった。
 今回の課題曲も、お互いに意見をすり合わせることはなかった。
 海羽は、彼女の持つインスピレーションだけで曲を作ってきた。
 トキヤもまた、その曲に合わせた詩を書いて、そして歌ったつもりだった。
 なにも損ねたりはしていない。
 そう、思っていたのに。
「不合格…なんて」
 プライドが傷ついた、最初はそう思った。
 けれど、海羽が頭を下げてきて、何かが違うと思った。
 彼女に責任を押し付けるほど、出来は悪くなかったのだ。少なくとも、曲そのものに問題はなかったと思う。
「…私が、原因…」
 苦く呟いて、ため息をつく。
 確かに、歌いだした瞬間になにかおかしな感じはした…けれど。

 そんな時だった。
 ふと、耳を掠めた“音”。
 ピアノだ、と思うと同時に、音のする方角を見る。
 一つだけ、窓が開いている部屋があることに気付いた。風にカーテンが揺れている。明かりはついていないが…この音は。
 指遊びのような、たどたどしいものだったそれが、一瞬止まって。
 その後に流れ出したのは、繊細な旋律。
 どこか寂しい印象の、それでいて甘いメロディ。
 音楽が、色を纏う。景色を見せる。
 …こんなことができるのは。
「っ、…」
 トキヤは、知らず駆け出していた。



 個人練習用の部屋が並ぶエリアだ。
 グランドピアノが一台ある程度の、少し狭い部屋。
 音が聞こえてきた部屋を探す。
 防音だから、窓が開いていてもこちら側には聞こえないかもしれない。
 たしかこのあたり、と。
 一枚のドアの前で止まった。
 かすかに、聞こえる気がする旋律。
 ゆっくりとノブを回す。
 静かに、扉を開いた。
 音が大きくなる。
 見た室内、ピアノに向かっている人影。
 窓からの薄明かりの中で、世界を紡いでいる。
 黒い髪が、そのわずかな照明を弾いて、輪郭を作っていた。
「…早乙女さん」
 呼んでみた。
 演奏が止まる。
 明かりをつけようと、トキヤの手が壁へ向かう…が。
「ごめん。つけないで。今、見せられる顔してなくて」
 海羽の声が、部屋に渡った。
 あまり、力強いとは言えない声音。むしろ、少しかすれていて、
「……なんで来ちゃうかな、キミは。予想外だよ」
 そう、これは泣いた後のような。
 トキヤは手をおろし、
「七海さんが、心配しているそうですよ。一緒にTVを見る約束をしているのでは?」
 距離を詰めるのも嫌がるだろうな、と思い。少し、歩み寄るだけにして。
 海羽は溜息をつき、
「…そうだった…携帯、今、切ってて」
 連絡がつかない理由はそれだ。
「そうですか。では、私のほうから連絡を入れます。あなたが見つかったら、知らせてほしいと言われましたから」
 手元にすらないのか、彼女は携帯電話を手に取ることすらしない。そま代わりに、トキヤは上着のポケットから自分のを出し、音也に連絡を取った。間もなくしてつながった回線、海羽が見つかったことと…もうしばらく戻らないこととを伝える。
 切ってから。沈黙があって。
 薄明かりに見えた海羽は、俯きがち。長い黒髪が、彼女の表情を隠す。消沈は見て取れた。
「…一人で、何をしていたのですか?」
「そこ、訊くの?」
「他に訊くことがないので」
 ナニソレ、と。海羽の苦言が小さく聞こえた。
 鍵盤の上の手をおろし、彼女は吐息する。
「反省会、だよ」
「なぜ、私を同席させないのです?」
「ボクの反省会だから、キミは関係ないよ。ボクは、…」
 言葉が継がれず。
 海羽は、首を左右に振り、
「ボクは、魔法使いなんかじゃない…」
 声が震える。
 あげた顔。
「ほんと、ゴメン。不合格とか、申し訳なくて」
 今にも泣き出しそうな、苦笑。
「いくつか作って、キミがあの曲を選んで…良いと思った。キミのイメージに合うって。きっと歌いやすいって思った。でも…っ」
 トキヤは、ゆっくりと歩みを進める。近すぎないように、しながら。
「歌いやすかったのは、事実です。私も、結果に驚きました」
 誰かのせいにするのは容易いことだ。けれど、それでいいとはトキヤは思わない。落ち度はなんだったのか、納得のいく説明が欲しかった。だから、あの時海羽がいなくなった後、担任を捕まえたのだ。
「何がいけなかったのかと、日向先生に尋ねました」
 七光りなど気にもしないだろう彼ならば、きちんとした理由をくれると思った。
「…龍也は、なんて?」
「ハートが足りない、と。私の歌には、それが不足していると言われました」
 その言葉に。
 海羽は、ぎゅっと目をつむった。
「…そっかぁ。キミも、なのかぁ…」
 天井を仰ぐ。黒髪が揺れた。
「も?」
「同じことを、ボクも言われてた。おじ貴が、そう言ってた。“海羽の音楽には、アイがない”って。ハートが入ってないって。でも、そんなの、ボクはどうしていいかわからなくて。音楽を、奏でることを好きだとさえ思えなくなったボクに…。それでも、ボクの音楽は世界を見せる。それができるなら、他はいいじゃないって…思ってた…けど」
 そうじゃなかったことは、今回の結果が物語っている。
 ハートが足りない、と評される者同士が重なったら、あんなモノクロの世界にしかならないのか。いっそ白も黒もなく、線だけの世界だったと言ってもいいほどに。
「あの時…教室で一緒にやった、たったワンコーラスにも敵わないなんて。何が違ったんだろう、何がいけなかった? ボクは、キミの何を見落として、キミにあんな屈辱を味わわせてしまったのか」
 あの日、屋上で。海羽は、『キミがキミとして一番輝ける曲を』と言っていた。自信があったのだろう。けれど、結果はそれに沿わず。
 …でも。トキヤは首を横に振った。
「早乙女さんのせいではありませんよ」
 そう言った彼の口調は、とても落ち着いていた。冷めた印象が和らいで、むしろ優しいぐらいで。
「そんなこと、ない」
「いいえ。少なくとも、あなた一人のせいではない。曲への評価はよかったのです。私の、歌が」
「キミの歌がよくなかったなんてない!」
 荒げた声が、意地を張る子供のようで。トキヤは驚いたが、表情には出さないポーカーフェイスと言えば聞こえはいいかもしれないけれど、どちらかというならば“驚いている場合ではない”だった。
 海羽はとにかく自分のせいだと思っている。だが、トキヤはそう思っていないし、それを認めることもない。彼女の曲は悪くなかった、その部分をきちんとわかってほしいと思った。
「落ち着いてください、早乙女さん。私も、初めは納得がいかなかった。でも、それをあなたの曲のせいだとは思っていない。あなたはちゃんと、私に配慮して曲を作ってくれた。兄とは違う、HAYATOでは歌えない曲を」
 海羽が作ってきた曲はどれも、ちゃんとトキヤをイメージしていたと思う。あの短時間で、そしてまだほとんど交流もない状態なのによくも、と言いたくなるほどしっかりとつかんできた。
 その中から、トキヤ自身がこれと思った一曲を選んだのだ。
 上手く歌えた、はずだった。
「確かに、歌っているときに違和感を感じました。…違和感、とは違うか。なんて言うのか、あのワンコーラスの時のような、気持ちの高揚がなかった。あなたの曲で歌うのは心地いいのに、それはあの時のものとは違う。しいて違いをあげるなら、…あなたが傍にいなかった、ということでしょうか」
 トキヤは海羽を見つめる。彼女は、どこか呆けた様子で、
「ボク、が? でも、ボーカルブースには入れないんだし…」
 しかも、その時海羽はブースの外にもいなかった。別の用事があり、テストはトキヤ一人で受けたのだ。作曲者もその場にいなければならないわけではないと言うから、甘んじてしまった。
「いえ、たぶんそういう物理的な話ではないのです。私は、あの曲の中に、あなたを見つけられなかった」
 話しながら。トキヤは改めて、そうだったのだと思う。
 あの、物足りなさは。
 繋がる相手のいない音楽故の。
「あなたの曲は、私らしさを意識するあまり、作曲者であるあなたが存在しなかった。そして、私の詞と歌は、やはりあなたがいるということを失念したままで完成した」
 だから、ただの音と、ただの言葉でしかないものになってしまった。
 それぞれに、独りよがり。
「私がスケジュールを合わせられないせいで、あなたが一人で曲を作り、私が一人で詞を書いて歌うというスタイルになった。それ自体は問題ないでしょう。けれど、…」
 その後のトキヤのセリフを。海羽は、小さな溜息の後で続けた。
「二人で作る、っていうことの本質が、見えてなかったってことかな」
「…まぁ、そういうことでしょう」
 歌を、曲を、世界を。二人で作るのだという気構えは、確かになかったかもしれない。
 海羽は『作ってあげる』つもりで。
 トキヤは『歌ってやる』つもりで。
 どんな歌がいいとか、こんな曲にしたいとか。そんな相談も何もなく、ただ機械的に作業をしたにすぎない。
「ハートが足りない、という件に関しては、正直どうすればいいかはわかりません。けれど、お互いにお互いがもっと見えていれば、多少は何とかなるのかもしれない」
 知り合って間がない二人、一緒に過ごす時間もほとんどなく。相手のことは、データでしか見ていない。
 少なくとも、それでは駄目だと言う結論。

「…そうかぁ…」
 前髪をくしゃりとかきあげて、海羽は息を吐く。
「わかった気でいた、だけか。なにそれ、片思いよりタチ悪いじゃん」
 自嘲気味、笑ったような吐息。
「そうですね。片思いならまだ、相手のことを知ってる」
「っていうか、知る努力をしているよね」
 呆れた様子で、二人は顔を見合わせた。
 明かりが少なすぎて、そして距離がありすぎて。表情は、あまりわからない。
「…椅子あるよ。座りなよ」
 ピアノと、窓の間に。教室で使っているのと同じ椅子が一脚ある。海羽は、その椅子をトキヤにすすめた。
「いいのですか? そこに行くと、顔が見えますよ」
 窓から入る、照明と月明かり。それだけでも、その距離ならば海羽の顔はちゃんと見えるだろう。
 さっきは、見られたくないようなことを言っていたけれど。
「…もう、いいよ。泣いてたのはバレてるだろうし」
「まぁ、声がそんな感じですから」
「悔し泣きだからね。ぐずってたわけじゃないから」
「誰も訊いてません」
 ピアノ側からまわって、トキヤはその椅子に座った。確かに近い。
 海羽の顔。目が赤くなっているが、瞼が腫れるほどではないようだ。
「再テストって、組は同じ?」
「他の人とやる気はありません」
「…いいの?」
「そう言っています」
「……ありがとう」
 海羽は、微笑んで頭を下げた。
 せっかくだから新しい曲を考えなくちゃね、と。そう言った彼女に、
「さっきの、曲なのですが」
 トキヤが切り出した。
「え?」
「窓から聞こえてきた、曲。こう、…ゆっくりとした」
 聞いたことのないメロディだったから、海羽のオリジナルなのだろうと思った。
 優しくて、切ない。
「あれを、聞かせてほしいのですが」
 瞬間。
 その薄明かりでもはっきりとわかるほど、海羽の顔が真っ赤に染まった。
「え?」
「ちょっ、聞いてた?!」
 海羽の慌て振りは、トキヤを驚かせた。普段わりと落ち着いているから、こんな風に慌てふためくところは初めて見たと思う。
「う、そ。アレは…聞いてないでほしかったな…」
 あはは、と。苦笑いをして。
「なにか、問題のある曲なのですか?」
「問題って言うか…あれは…」
 あれは。
 海羽は、少し肩を落として、
「あれは、あんまり縁起のいい曲じゃないんだ。葬送曲、っていうと大げさだけど」
「葬送曲?」
「いや、あの。昔、ボクが自分のために作った曲なんだ。失恋、したときに」
 “失恋”。その単語を聞き、
「相手は男性ですか?」
 と、即座に訊いてしまったのもどうだろうか。
「…一応、ね」
 あ、と思った時には、海羽の渋い顔があって。
「失礼しました、すみません」
 さすがに失言だったと思ったので、素直に謝る。
「いいよ。そりゃまぁ、思うよね。女の子のほうが好きなのは事実だし。でも、その時好きだったのは、男の人だよ。…どうかな、異性対象っていう意味ではもしかしたら初恋だったんじゃないかな。ちょっと遅いけど」
 言いながら。
 海羽は、誤魔化すように、鍵盤に手を置いた。
 静かに滑り出す。
 奏でられるのは、トキヤが望んださっきの曲。
 海羽が、失恋した自分のために作ったという。
 ピアノソロが似合う曲だと、トキヤは思った。
 そして、それを弾いている海羽の表情は、どこか寂しげで。
 ワンコーラス分を弾き終えると、演奏は片手だけになった。右手だけで、単音で流れていく。オルゴールのような印象。
「…初めから、叶わないって言うか…叶えちゃいけない恋だったんだ。想いに気付いたと同時に、どう諦めようって考えてた。好きっていう気持ちが大きくなりすぎないように気を付けながら、相手に気付かせないようにしているのは、結構キツかったな。恋ってこんなに苦しいのかって、それでも『恋をしたい』と思う世の女の子たちは、どんなに図太いんだろうって思った」
 こんなのに耐えて、その人の隣に収まるために努力をして。
「歌詞は、あるのですか?」
「え? あは、ごめん。これね、詞はないの。つけられなかったんだ。言葉をこめると、せっかく諦めたものが暴走しそうで。それが怖くて、詞はつけられなかった」
「…どうしても、諦めなければならなかった?」
「うん。相手の人のお仕事の都合で。あ、でも、告白はしたんだよ? ちゃんと、本人目の前にして。恋の形見ってやつだよね。すっごいびっくりしてたけど」
「もともと、親しかったのですか」
「うん。今も親しいよ」
 さらっと、海羽は言って。きょとんとしたトキヤを見て、小さく笑って。
「恋を殺して、友達を続けてる。けど、その人の夢を応援するのも、一緒にハメ外して騒いだりするのも、キツイ時に励ましてあげるのも。全部、恋人じゃなくてもできるんだってわかったから。そのポジションにいなくても、いいかなって思えたんだ。もちろん、友達と恋人はいろいろ違うけど」
 踏み込める領域も、お互いの距離も。
 共有できるものとできないものの違いも。
 望んでいいこととそうでないことと。
「でも、もう、ほんとに。恋人に求める欲求的なものは、何にもないんだ。一緒にいたい、とか。キスしたい、とか。なぁんにも。この曲作りながら結構泣いたから、ちゃんと置いてこれたんだろうね」
 だから余計に恥ずかしい、と。当時を思い出してしまうからだろうか、海羽はエンドマークをつけないで手を止めてしまった。
「…では、早乙女さん。その曲を、私にくれませんか」
「ボクの話聞いてた? 縁起よくないって…」
 言ったじゃない。
 そんな言葉尻が、消えていく。
 海羽が見たトキヤは、真剣そのもので。
「…キミが歌うには、少し…違わない?」
「しかしそれを言ったら、この曲そのものが、あなたが作ったとは思えないほど現在の楽曲嗜好と違うのでは」
「それは、そうだけど。けど、“ハートが足りない”なんて言われて、こんなハートがなきゃ成立しないような曲を?」
「気に入ったのですよ」
 単刀直入な理由だ。
「日向先生は、私の歌を『譜面通りでしかない歌』だと言いました。そもそも楽譜が存在しないあなたの楽曲を歌うのに、譜面通りと言われるほど、私の歌には感情がないのでしょう。ですが、HAYATOのほうがよっぽどいいと言われて、黙ってなどいられない」
「じゃあ、その対抗心を曲にするとか」
「HAYATOとの確執に、あなたを巻き込むようで本意ではない。それに、私自身がこの曲を歌いたいと思っているのです」
 お願いします、と。頭を下げられて。
 海羽は、う、と小さく呻いた。
「そんな、頭下げなくたっていいよ…」
 ここまでされてまだ渋るのは、なんだか違う気がする。
 結局、
「…残骸を渡すようで気はひけるけど。気に入った曲を歌うのがいいだろうし、…それでこの曲が…あの頃のボクが慰められるなら、それも悪くはないか」
「今、頭の中にいくつかフレーズが浮かんでいます。筆記具がないので、書きとめられないのですが…」
「じゃあ、もう、作業入っちゃおうか。レコーディングルームあいてるだろうし。ペンも紙も、あそこならあるし」
 よし、と海羽は立ち上がり、鍵盤の蓋を閉める。
「あ。待った。キミ、バイトあるよね?」
「そう、ですね。平日は早朝からあります」
「夜更かし、ダメだな。んー、じゃあ、ピアノのソロだけ録っちゃう。それで、歌詞はめてみてよ」
「…別作業ですか?」
 不満げなのは、一目瞭然だった。
 海羽は、う、と唸る。
「そりゃ、ボクは一緒にやってもいいんだけど。キミはバイトなんだし、寝なきゃダメでしょ」
「構いません。むしろ、気持ちが上がっている今やってしまう方が、ノると思うのですが」
 それはそうだけど。
 海羽は少し迷って、時計を見た。
「…二時間。だけ、で、あらかたキメよう。仮眠ぐらい、できるよね?」
「えぇ。問題ありません」
「よし、すぐ行こう!」
 








 レコーディングルーム。
 曲作りのための機材も十分に用意されている。
 二時間、と決めたからには。
「ボクは仮のメロディを詰める。その間に、いま思いついてるフレーズを書き出して」
「楽器は、ピアノだけでいいと思いますが」
「ちょこっとだけ、他のも使うかな。でも、ピアノメインだよ」
 そう言った後。海羽は、えーっと、と言葉を濁した。
「どうしました?」
「いや、その。今からしばらく、様子がおかしくなると思うけど…キミは気にせず自分の作業しててね」
「なんですか、それは」
「え、だって。…ちょっと、あの頃の気持ちとか思い出さないと、曲にイメージつかないというか。リベンジだもん、ちょっとのっけないと」
 だから、こっち見ないで。
 そんな風に言って。海羽は、必要なシステムを立ち上げる。
 鍵盤に向かう。音が邪魔になるといけないからとヘッドホンをして。
 トキヤは、広げた紙に頭の中の言葉たちを書き始める。
 静かな時間が過ぎた。
 やがて、
「あ、ダメ」
 小さく、海羽が呟いたのが聞こえた。
 声が少し、高かったように思って。トキヤは、ペンを置いて海羽の傍に行った。
「どうしました?」
 様子がおかしくなるとは言っていたが、今の声は何だったのか。
 ポンと肩を叩くと、海羽の体がびくっと震えて、
「ひゃっ」
 悲鳴が上がった。
 振り仰いだ彼女の、その顔が。
 瞳が、潤んでいて。
「早乙女さん…?」
「あ、ごめん。うん、なんでもな、い」
 と言いながら。目じりから、雫がこぼれる。
「泣いているんですか」
 さすがに驚いた。
「や、これはその。思い出したらちょっと、うん」
 気にしないで、と。誤魔化し笑いをした彼女。
「そんなに好き、だった…?」
「あー、うん。そうだね。好き、だったんだね」
「今でも?」
 その問いが、何故出てしまったのか。
 トキヤ自身にもわからなかった。
 窺う眼差しは、彼女の瞳の奥を見据える。
「…ううん」
 海羽は首を横に振る。微笑みは、切なさをにじませて。
「それじゃ、あの時頑張った自分に申し訳ないよ。大丈夫、ちゃんと置いてきてるから」
 シャツの袖で、涙を拭う。
「で、だ。一応、主な部分はできたよ」
 流すね、と言って。彼女は、今録音した分を再生する。
 ピアノの音を軸に、邪魔しない程度の他の楽器。ごくシンプルなアレンジだった。
 繊細で、切なくて、そして優しい。
 暖かい、と感じた。
 世界を映すその音楽性はそのままに、今までにはなかった要素が入っていると、トキヤは思った。
「…ハートが足りない、って言われて。ボクはもしかしたら、置いてきすぎたのかなって思った。だから、ちょっと多めに戻してみたんだ。今度の曲は、もともとボクのための曲だから…キミがどう歌うのか、全然想像つかない。だから、歌いにくかったらごめん。ボクは、あの頃のボクに…未来の今、結構やれてるよって伝えたくて、そう思って弾いてみた。そんなんでも、ハートって入るのかな?」
 そして、海羽の声音が違うと、トキヤは気づいた。
 男性に恋をしていたころに戻っているという彼女は、…トキヤの知る彼女ではない。
 雰囲気が、ほわりとまるい。
 女性的、否、女性なのだ。
 おそらく、少し前から。
 少々の開き直りをもって、彼女は素に近い状態でいたのかも知れない。
 喋り口調も、普段よりずっと柔和な印象だ。
「入っている、と言いたいですが。私も、ハートが足りないと言われた身ですから。まぁ、やるだけやってみましょう」
 “恋する女は綺麗”と、昔誰かが歌っていたような気がする。
 事実、今の海羽は。トキヤが、目を合わせるのをためらってしまう、なにか不思議な魅力を醸し出している。
「…ん?」
 トキヤが見ていると感じて、海羽はトキヤを見上げた。
 すかさず、トキヤはその視線を外して、
「そのまま、リピートしてもらえますか。音数を合わせながら、詞を調整します」
「了解。じゃあその間に、なにか飲み物調達してくるね」
 操作をして、海羽は部屋を出て行く。
 残した笑顔が、まぶしいぐらいだった。
 見送ったトキヤは、ふぅ、と吐息して。
 今日、二人になってから見た彼女の表情や仕草を思い出す。

 不合格に落ち込んで、自分が悪いと言い張って。
 お互いの欠点を知って、苦笑して。
 親近感を得たのか、顔を見られたくないと言っていたのに近くに呼んでくれた。
 たまたま弾いた過去の曲を聴かれたと知って、赤面して慌てて。
 どうしてもと願ったら、しぶしぶながらも聴かせてくれた。
 それが、置いてきた恋心だということを明かしてくれた。
 あえて歌いたいと言ったトキヤに、その亡骸を託してくれた。
      思い出して、泣いてしまうほどの想い。
 二度と触れまいとしていた、そんな部分を。
 いいよ、と。
 許してくれた。
 だから、この曲は。この曲だけは。
 絶対に、失敗はできない。
「…あなたの作る曲は、魔法です。歌いたいと…伝えたいと、私の欲求を刺激する。この感覚は…HAYATOでは得られない。彼には、もはや与えられない…」
 鳴り響いている、旋律に。
 トキヤは、さっき書き出した言葉たちを埋め込み始めた。
 “海羽”に、メッセージを送るために。
 いま、この心にある感情を…残らず込めて。





 最寄りの販売機で飲み物を買って、それを抱えて部屋に戻る。
 ドアを開けたとたん、耳に流れ込んだのはトキヤの歌だった。
 ピアノの流れに乗る、囁くような歌声。
 曲に負けない、勝ちすぎない。
 歌声は共存し、海羽が奏でた世界を支え、混ざり、包み込む。
「……」
 立ち尽くした。
 心臓をわしづかみにされたような衝撃。
 だが、あるのは痛みではなく。
 ただ、とにかく、心地いいぬくもり。
 歌い終わったトキヤが、ドア前に立っている海羽を見つけて。
「おかえりなさい」
 と、言ったと同時に。
 海羽の双眸から、つっと涙が滑り落ちた。
「早乙女さん?」
「……」
 雫はとめどなく落ち、海羽はうつむいた。
 リピートのかかっている演奏が、また初めから始まる。
 トキヤは歌いだした。
 歌詞が言う。『もう泣かなくていいよ』と。
 歌いながら、海羽に近づいていく。
 間近。
 やや、屈んで。
「少しは、あなたを慰められたのでしょうか、    
 海羽の耳元で、ぽそりと囁く。
 それは、名前だった。
 瞬間、海羽は崩れるように膝を折り、床にへたり込んだ。
 “うーちゃん”
 彼の声が、やや遠慮がちに紡いだそれは、この学園では一人しか呼んでいない、海羽の愛称だ。
 彼女をそう呼ぶのは、月宮林檎。
「おかしいな。そんなにすぐわかっちゃうはずないんだけど」
「…すみません。そんな気がしたので。日向先生より、月宮先生との方が、あなたは表情が優しいような気がして」
 過去の恋について聞いた、その断片と。現状の彼女の、知る限りの情報を照らし合わせて出た答えだった。指摘する必要はないとも思ったが、正解を知りたいと思ってしまったから。
「だからって…泣かして楽しいか、このドS」
「心外ですね。私は、あなたを想って歌っているのに」
 海羽に合わせて、トキヤも床に膝をつく。そうしてから、ふんわりと、彼女を抱きしめた。
「っちょ、」
 驚いた海羽がもがいたが、耳の近くで聞こえる歌声に気を削がれる。
 それほど長い時間離席していたわけではないのに。もう、こんなに完成した詞をつけているなんて。
 仕方なく。海羽は、そのままトキヤの歌を聞き続けた。
 
 フルコーラス歌って、曲がエンドマークを付けた。トキヤが、ゆっくりと海羽から離れる。
 海羽は立ち上がり、リピートを切ると、
「いいと思う。…ありがとう」
 感謝の言葉は、とても素直に出てきた。
「なんか、もったいないぐらいにいい歌詞だね。この曲に、いいの?」
「この曲だからですよ。オケのほうは、あのままでもういいと思うのですが」
「…うん。でも、ピアノ以外が邪魔かなって思えた。もっと減らす。いっそ、生演奏でやりたいね。今のキミの歌は、弾きたくなる。『弾かせて』と頼み込みたくなるぐらい」
「歌詞は、もう少し煮詰めてみます」
「そうなの? よさそうだと、思うけれど」
「今、あなたを抱きしめながら歌ってみて、まだ改善の余地があると感じました」
 海羽は、またカッと赤くなる。ほぼ無意識に、手のひらで頬を抑えた。隠したいのか、確かめたいのかという仕草だが、トキヤの目にはただ“可愛い”という印象だ。
「そ、そう。じゃあ、できたら見せて」
「あと、この曲にはイントロがありませんよね?」
「ん、うん。あ、出だしムズカシイ? つけようか」
「いえ、それは大丈夫です。ただ、オケ開始前に、少し、空白を入れてほしいのです」
「え。……できるけど、それはますます難しくなるんじゃ…。イントロなしの合図なしで空白入れて…何するの?」
「冒頭に、アカペラをと」
 メッセージ性を高めるためのインパクトが欲しいから、と。トキヤの言葉に、海羽は小さく唸った。
 悪くない、むしろいい。けれど、デジタルの音源にしてしまうと、その拍は取りにくくなるかもしれない。
 出だしにミスるわけにはいかない。
 …でも。彼なら。
 彼となら。
「わかった。その部分の歌詞と、キミが考えてるメロディを聞かせて」
「はい」



 結局二人は、その二時間で曲を完成まで持って行ってしまった。
「いくら既存の曲だとはいえ…二時間で済むんなら、最初っから二人でやればよかったね」
 寮へ戻る道で、海羽が苦笑する。
「本当ですね。何を渋っていたのかと、あの頃の自分を殴りたいぐらいです」
「まぁ、時間は戻らないから。しょうがないね」
 時刻はすっかり真夜中で、周囲には誰もいない。
「…時間が戻るなら…」
 トキヤは、足を止めて。
 問いたいことがあった。
「もしも時間が戻るなら、あなたはこの曲を作る直前に…戻りたいと思いますか?」
 海羽も足を止めて。
 ひんやりした夜の風が、二人の間を抜けていく。
「…思わない」
 はっきりと、海羽は答えた。
「もしもそれができたとして。林檎がボクを好きかはまた別の話しでしょう。本格的にフラれたら、ボクはきっと生きていられないと思う」
「そんなに、好きだったのですか? 命を考えてしまうほど」
「……自殺願望のある子だったからね。まぁ、いろいろあって。でも、林檎を好きになって、世界が少し変わって…諦めなきゃって思った時に、こういうので命まで諦めるのは違うのかなって。林檎がアイドルとして成功していくのを見ていたいと思った」
 遠くてもいいから。
「今は、…まぁ、林檎は割とスキンシップ激しい人だし、ちょっとびっくりするときもあるけど、友達の領域は出てないと思う。ボクは“アイドル・月宮林檎”のファンでもあるから、林檎ちゃんに構ってもらえるのは単純に嬉しいし」
「…それは、辛くはないのですか?」
 かつて、とはいえ。一度でも恋心を抱いた相手だ。
 海羽は首を傾げ、
「どうかな。普通は辛いのかな。でもほら、諦めがきちんとできてるから大丈夫だよ。好きなままで、近くにいて、思いは届けちゃいけなくて…とかだと、辛いかもね」
 そこまで言ってから、彼女はハッとした顔をして。
「もしかして、これって恋愛相談?」
 まじまじと、トキヤを見た。
 トキヤは、え、と呟く。思いもよらない方向に話が向いてしまった。
 海羽は慌てた様子で、
「ゴメン、ボクのほうが確かに年上だけど、相談されるほど経験値高くないっていうか、もちろん頼られるならそれなりにアドバイスもしたいけど」
 あちゃー、とでも言わんばかりにこめかみを抑えている。
「いえ、あの」
「やっぱり、アイドルコースの子? や、どっちにしても今は校則あるし、おじ貴がどこで見てるかわかんないし。でも、絶対諦めなきゃってわけじゃないからね! ボクは諦める選択したけど、ぶっちゃけバレなきゃ結構大丈夫だから!」
 そのアドバイスはどうだろう。突っ込みたかったが、それどころではない。
「うわぁ、ちっとも気づかなかった。キミ、男女問わずいつもツンツンしてるから。他人と関わるの、よっぽど嫌いなのかって思ってたよ」
「あの、早乙女さん」
「表情少ないし。もしかしてアンドロイドとかそういう類のを、ついにおじ貴がやっちゃったのかと思ってたけど。よかったぁ、人間だったんだねぇ」
「早乙女さん」
「どの子だろう、Sクラスの子? あ、訊いちゃダメだよね。うん、ボクは詳しいこと知りませんって方がいいよね」
「早乙女さん!」
 すっかり暴走モードだった海羽を、トキヤは。彼女の肩を少し強くつかんで、なんとか止めることに成功した。
 海羽は、えっ? と目を丸くしてトキヤを見ている。
「…もう。どこからそんな話になったんですか。一人でサクサク進めないでください。そもそも、私は恋愛相談をしていたつもりはないですし、好きな人がいるわけでもありません」
「だって。キミ、なんだかボクのその恋のことに、引っ掛かってるみたいだから。自分に当てはめて、悩んでるのかと思って」
「違います。引っ掛かって、は、いるかもしれませんが」
「…? でもまぁ、これから誰か好きになるかもしれないじゃない」
「それは、ないとは言い切れませんが…いえ、規則ですから。私はアイドルになりたいのです」
「あ、うん。それはもちろん。まぁ、困ったら、多少は相談に乗るよ」
 相談に乗る、と言われて。トキヤの心中になにやら靄が現れたことは、本人も疑問符を浮かべてしまう現状。
「…ありがとうございます…」
 トキヤは海羽の肩を放し、二人はまた歩き出す。
 少し、沈黙の間があいて。
「好きって気持ちは偉大だね」
 どこかしみじみと、海羽が言う。
「ボクも、全部置いてくることなかったんだなぁって改めて思ったよ。そう言えば、ピアノ弾いても楽しくないとか思うようになったの、あの頃からかもしれない」
 夜空を見上げて、嬉しそうに笑った。そのまま、傍らのトキヤを見る。
「キミと組めてよかった。同じ欠点を持つ人じゃなかったらきっと、ボクは気づけなかったよ」
「そう、ですね」
「挫折も大事だ。一回目で合格してたら、ボクはきっとあのままだった」
 どこか、晴れ晴れとした笑顔だった。
「また、なんかあったら言ってよ。課題とか。ボクのでよければ、曲の提供するから」
「…えぇ」

 女子寮の入り口が見えてくる。
 トキヤは、自分の足取りが少しずつ重くなっていると気づいた。
 …名残惜しい。
 そんな風に思った自分を、不思議にさえ感じた。
 もっと。
 この人と、時間を共有していたい。
 どうしてそんなことを考えるのだろう、と。

「明日、再試受けるの?」
「えぇ。明日の放課後から受け付けると言ってましたから。すぐにでも」
「わかった。ボクも明日は大丈夫だから。今度は一緒にいるよ。さっさと片付けよう」
 入り口前。
「送ってくれてありがとう。遅くなっちゃったけど、少しでもちゃんと休んで。バイト、頑張ってね」
「はい」
 じゃあね、と手を振って。
 海羽は、寮の中に消えていく。
 見えなくなるまで見送って、少し立ち尽くして。
 小さく吐息して、トキヤは男子寮への道をたどった。
 …本当は、引き留めたかったと言ったら…彼女はどんな反応をしただろう。


 翌日の再テストは、文句なしの最高得点で突破した。
 『最初からコレでもってこい。だが、まだまだだな』と、龍也から小言のような言葉をもらったが、二人は十分だと思った。
 これ以降、Sクラス一ノ瀬・早乙女組の快進撃が始まる。
 








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2013.05.11 初アップ
2013.11.11 第一改訂
 だいぶ長編になってし
まいました。
二つに分けることも考えたのですが、やはりここはひとつなぎがいいかなと強行しました。
アニメで、トキヤがレコーディングテスト不合格になっていたので、そういう挫折もいいなと思って採用させていただきました。
私の書くトキヤは、公式様ほどにツンツンしていない(少なくとも、海羽相手には)ので、随分違和感に苛まれたのですが、他のキャラが余り前に出ていないことを考えると、こんなもんでもいいんでしょうかね…