<span style="color:#FF33FF">本編外のエキストラストーリーです。
来栖くん視点でパートナーちゃんのお話。
時間軸としては、入学試験〜入学初日〜Episode.6の前あたり。</span>



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 彼女を知るきっかけは、あの日落とし物を拾ったことからだった。
 入試の日だ。学園の入口入って少ししたぐらいのところで、それを拾った。
 “愛佳”
 珍しいと思った。名前じゃなく、それが“名前の書かれたハンカチ”だったからだ。
 明らかに年季が入っていそうな、色の褪せたそれはキャラクターもので、確かもうずいぶん昔の…俺だって知らないような昔のアニメの。
 特集番組でちらっと見たことがある程度だから、番組名はこのハンカチにも書かれているからわかるけど…キャラ名なんか思い出せもせず。
 ただとにかく、学園の敷地内で拾ったってことは、近所の子供の持ち物ってわけでもないんだろうなって思って、学園の関係者の誰かに届ければいいかなんて…思った。
「アイカ、かな」
 油性ペンで書かれている、もうだいぶ消えかかっているその名前を読んでみて。単純に、カワイイ名前だなって思った。
 

 名前と本人にギャップがあるなんて言うのは、よくあることなんだけどな。





<i>EX.“Girl’s Side”『チビちゃんとチビ子ちゃんとネコ耳』</i>





 その光景を見たとき、俺は正直『一目ぼれなんてものがあるのなら、それはきっとこういうタイミングで発生するんだろうな』なんてわけのわからないことを考えた。
 入学式の後。幼馴染でルームメイトの様子を見に行こうと、Aクラスの教室を訪れた時だ。
 ぱぁん、と。それはそれは威勢よく響いた音は平手打ちのそれで、叩かれているのはまさに俺の幼馴染その人で。その正面には、…ちっちゃい、以外の形容が思いつかない女子生徒がいた。叩いた張本人だ。
「でかいナリして、我慢もできんのか!」
 教室内に響いた、怒号というにはなんて言うのか、圧倒的に声に凄味が足りないというか、…ちょっとダミ声というのか。女の子の声なのはわかるけれど、…声優とかだと、少年の役とか小動物系の役あてることが多そうな声…説明しづらいな。
 そして、なんだ、あの頭。髪型? 右と左に、三角に巻いたお団子が、まるで…ネコの耳みたいだ。しかも、左右で髪が染め分けられてる。黒と、明るい茶とで別れた、色違いの耳…個性的すぎる。
 そんな、見た目も声も独特な彼女と。叩かれて、呆然としている幼馴染と。…教室内はぽかんとしているが、まぁ、何があったかはすぐわかった。
 那月め“悪い癖”が出やがったな。
「おい、那月! なにやってんだ!」
 割って入ると、幼馴染・四ノ宮那月は満面の笑みで俺に抱きついてきた。
「だーっ、ひっつくな!」
「しょうちゃん!」
「いいから離せ、はーなーせー!」
 事情を聴くとか、それどころじゃない。
 そんな俺たちを、見て。
「……なんなの、デキてるの?」
 真っ先にこういう反応をした、この彼女もどうなんだろう。
 正面から見ると、…ますますネコみたいだった。つり目なせいかな。つか、前髪! 黒い方、ひと房だけ白い部分がある…三毛か?!
「んなわけあるか! っつか、あんた、コレされた?」
 コレ、つまり那月のハグ。離れやしねぇ。
「される前にはたいた」
「未遂か。良かった」
 ほんと良かった。
「おい、那月! ちゃんと相手のこと考えて行動しろ!」
 女の子、ももちろんそうなのだが。こんなちっちゃい子、那月の馬鹿力で抱きしめられたらポッキリ折れっちまう。
「ごめんな。こいつ、小さくて可愛いもの見ると、抱きしめずにはいられないって病気で」
「…そぉネ。それは病だワ。この図体じゃ、世の中の大半の人々が“小さい”に該当しちゃうし。残念なほどの曇り眼鏡みたいだから、なんでも可愛く見えちゃいそぉネ」
 その通りなんだよ。見境ないにもほどがあるんだ、コイツ。
 俺の後ろから、ひどいですー、とか言ってやがるけど。何にもひどくない、事実言ってるだけだからな。
「…まーいぃワ。美少年のカラミを間近で見られたから、もうヨシにしといたげる」
「キモいこと言うなよ」
「何言ってるの。美少年たる自覚があるから、アンタたちはアイドルコースなんでショ」
 ぐ。
 ま、まぁ、…うん。
 つか、なんか、結構毒あるな…。喋り方もちょっと独特だし。風変りすぎねぇ?
 方言、じゃあないな。なまってる感じじゃない。
 やっぱ、声質か?
「変な縁だけど、ちっちゃい同士で仲良くするのも悪くなさそうネ」
「ちっちゃいって言うな!!」
「……往生際が悪いわよ、ショーネン。ま、アンタはまだ伸びるかもだけど」
 しょ。少年?
 待て、同い年じゃないのか?
 早乙女学園は、15歳から入学が許される。俺はその15歳。彼女だって…
「? どした、ショーネン」
「や、だって。そんな、少年とか言われるような…」
 愕然とした俺に。彼女は、近くの座席…たぶん本人の席なんだと思うけど、の、横にかけてあったカバンから何かを出した。
 ぴっ、と見せられたそれは。
「う、運転免許証?!」
 自動車だ、つまり18歳以上ってことか!
 これで?!
 でも、写真はまさに本人(髪型もこのまま)だし、他人の免許証なんてそう持ってるものでもないし………ん?
 名前。
 鈴城愛佳。
 あ、れ? 愛佳、って。
「その名前…あのハンカチの」
 俺がぽろっと呟くと、彼女の顔色が変わった。
「もしかして、拾ってくれたヒト?」
 もう一度、鞄の中に手を突っ込む。そして出してきたのは、あの日俺が拾って届けたキャラハンカチ。
 そう、それだ。
 頷くと、
「なんと! ですてぃにー!!!」
 って、彼女が叫んだかと思うと。正面から、思い切り抱きつかれた。どーんと。むしろ、どかーんと。
 ぐえ。いまの、ちょっと入った…
 背中に那月で前に、って。俺はなんでサンドされてんだ??
 黙って俺を抱きしめてた那月が、しょうちゃんずるいですー、とか言ってるけど、何がズルイのかわかんねぇ。つか、俺は被害者じゃないのか。
「よかったよぅ、お礼言いたかったん! これ、いもちゃんのお守りなん、宝物なん! 受験の時落っことして、どうしよーって思ったら届いてて! どこの誰かもわかんないし、無事受かってたら会えるかなーって思ってたけどなんてスピード! いもちゃんカンゲキ!」
 ……いもちゃん、て、誰だ。
 流れ的に行けば、本人の事だろうけど。名前からの由来じゃないよな、あの字…から、いもちゃんにはならんだろ。
「ありがとぉね、ありがとぉ、ちびちゃん!」
「ちびじゃねぇ!!」
 俺より小さい奴に、チビって言われるとか、ねーだろ!!





 <S>    </S>思い出すだけで疲れる。
 愛佳(結局、名前はアイカではなくてマナカだった)は、聞けば年齢は19歳。今年二十歳とか…成人するのにその頭なのかってちょっと脱力したけれど、無類の猫好きなのだそうで、それはそれでアリなのかなぁと(ムリヤリ)納得した。
 いもちゃん、というのは実家での彼女のあだ名で、二人いるらしい義兄たちがそう呼ぶのだそうだ。家庭事情は複雑らしく、今は説明を省く。とりあえず、『いもうとちゃん』の略らしい。
 Aクラスの作曲家コースにいるアイツの、現在のお気に入りは…
「海羽様ぁティータイムご一緒しません?」
「んー、いいよー」
「きゃ、やったー☆」
 …Sクラス名物、男装女子の早乙女海羽だ。うっかり、同じゲームをやりこんでいる真っ最中という共通点があったがために、海羽はすっかり愛佳に懐かれた。いや、ダメじゃないんだけどよ。そのゲームは俺もやってるし。
 とにかく、初対面のあのきょーれつさは、決して初対面ゆえのインパクトなどではなく。あの後も、随時披露されていった数々のドラマ(むしろ事件)ですっかり明るみに出て。
 那月とは違う方向の問題児だということが周囲に知れた。
 そして、…なんでだろうな。なんで、どっちも俺が面倒見なきゃいけないんだろうな?
「あ、そーだ。しょーちゃん、後で一緒に写メ撮らせて? 実家のあんちゃんたちがサ、『学校のお友達の顔とか見たい』って言ってたんだー。那っちゃんとはもう撮ったからさー、あとはしょーちゃん」
 …あぁ。そのぐらいは別にいい。別にいいんだが…
「黒と白とシマとミケ、どれがいい?」
「ナチュラルにネコ耳出してくんな!」
「海羽様は、髪真っ黒だから合わせて黒かなー」
「巻き込むな、海羽を巻き込むな!!」
「那っちゃんは白つけたよー」
 那月…!
 嬉しそうにノリノリでつけたんだろうなっていう想像がかたい…!
「翔はミケにしたら? マナカちゃんとお揃いで可愛いじゃない」
「ノるなよ海羽まで!」
「んっ、しょーちゃんもミケにゃんになるぅ?」
 ぐふふ、と笑う、愛佳の。
 悪気120%のその様子に、俺の胃が軋む。
 
 
 作曲の腕は悪くないのに、なんでこう、制御しがたい性格してんだろう。
 それでも俺は、多分、卒業オーディションのパートナーにはコイツを選ぶ。
 他の奴とは違うハジケ方してるコイツの曲は、俺にあってると思うから。
 …けどよ。
 もう少し、……お手柔らかに頼むな?





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【後書きという名の言い訳】
登場編は、最後は翔ちゃんのパートナー。濃ゆいキャラがいいなと思い、髪の色が左右で違うとかネコ耳お団子ヘアとかいろいろ盛ってみました。ダミ声、というのは失礼ですが、声のイメージは某電気ネズミや青鼻のトナカイなんかでおなじみのアノ方で…あの方の声を、もう少しダミらせた感じです。
身長は、145cmくらい。とにかく小さい上に幼児体型なので、着る服の半分は子供服です。
そして…腐女子です…
翔ちゃん、頑張って!(胃薬各種用意しとくから)